今回のワンちゃんは全身のむくみ、呼吸が苦しい、食欲不振を主訴に来院されました。写真ではわかりづらいですが全身がむくんでおりぷにぷにと液だまりのような皮膚になっています。

この液だまりの原因は心不全と言って心臓の動きが悪くなることによって血流が悪くなり、正常に血が巡らなくなってお腹に水がたまる症状や全身のむくみを引き起こしていました。

心臓には左右にお部屋があり、左心不全(僧帽弁閉鎖不全)そしてそこから合併症として右心不全を引き起こし両心不全となっている可能性を考え治療を行っていきました。

また全身左右対称性の毛の脱毛、血液検査で肝臓の数値の上昇やコルチゾールと言われるホルモン値の上昇がみられました。
これによりクッシング症候群という副腎と言われる臓器からホルモンが出すぎてしまう病気があることがわかりました。
クッシング症候群ではホルモンが出すぎてしまうことにより多飲多尿、筋肉が薄くなる、肝臓の数値を上昇させるなどの症状を引き起こします。

この病気が隠れていることが心臓病を引き起こしやすくなる要因となる可能性もあります。

治療としては心臓に対して強心薬、血管拡張薬、利尿剤をクッシング症候群に対してはホルモンの薬を飲み薬で処方しました。
心臓病に対しては様々な薬を用意しておりますが、この三種類で収まらない場合はシルデナフィルという人間用の薬を使用することもあります。経過に応じて相談させていただきます。

経過は良好で食欲改善もし、呼吸も楽になり、むくみなども取れてきました。今後心臓の病気とは付き合っていくこととなりますが、家での生活が少しでも楽になれるようにお手伝いができればと思っております。よく頑張ってくれました。

右心不全により心臓の右のお部屋が大きくなってしまったエコー写真
下の丸いのが左の部屋、上の丸いのが右の部屋です。エコーの当て方にもよりますが本来は下の丸のほうが大きく映ります。

左のお部屋の悪化状況 大動脈とお部屋の長さ割合を測ったところです。本来であれば1.7くらいとなるのですが今回では2.49という数字になっています。

心臓の流速を測ります。

心臓がとても大きく、呼吸が苦しいです。肺水腫の併発はありませんでした。

副腎というホルモンを出す臓器の大きさを測ります。

左右対称性の脱毛
クッシング症候群の特徴の一つです。

写真ではわかりづらいですがお腹がポッコリし全身がむくんでいます。