猫伝染性腹膜炎(FIP)は猫、特に子猫で起こりうる命に係わる重篤な症状を引き起こす怖い病気です。

症例Aのネコちゃんは一歳未満の若い子で、最初は風邪症状で来院されました。来院してから一週間くらいした後、真黄色なおしっこをする、おなかが膨れている、元気がない、熱が高いなどの症状が出始めました。

症例Bのネコちゃんも一歳前後の若い子で、足を痛がるような主訴で来院しました。食欲元気はあるけどなんか少し元気がないという稟告もあり、検温をしたとろ体温が40℃を超えていました。万が一の可能性も考えて腹部のエコーを当てたところ多量の腹水が確認されました。

どの症例とも、超音波検査、全身の血液検査、外注のウイルス抗体価検査、症状などから猫伝染性腹膜炎(FIP)の可能性が非常に高いと診断をしました。とても怖い病気であるにもかかわらず、いまだに有効な治療法が確立されていません。

しかし、近年モルヌピラビルという薬を使って治療を行っていくという臨床データが少しずつですが出てきました。

モルヌピラビルの副作用として、皮膚の損傷、脱毛、肝障害、消化器障害、腎障害、骨髄抑制、血球減少、発癌性、変異原性、急死等があります。

体重の増減や、体調などにより薬の調整なども必要になってきます。
まだ、臨床データも多くないですし、教科書に記載されているような治療法と至っているわけではありません。

今回は、飼い主様とメリットとデメリットよく相談し、こちらのモルヌピラビルを用いての試験的治療の運びとなりました。

今回の症例では早期発見ができたので薬の反応もよく、おなかの腹水や炎症なども引いてきて元気に過ごしてくれています。

発癌性などの副作用なども気にしながら慎重な経過観察が必要になってくると思います。

症例A

  • 右:最初のエコーで腎臓が腫れていて、周りに黒く水が溜まっている状況
  • 左:投薬6週間後のエコー。腎臓の腫れが引き、腹水も落ち着きました。

症例B

  • 右:最初のエコーでお腹に水がたくさん溜まっています。
  • 左:治療開始3~4週間後。腹水がなくなりました。